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東京地方裁判所 昭和29年(タ)271号 判決

原告 草谷澄江

被告 大和茂(いずれも仮名)

主文

昭和二九年七月二六日附東京都練馬区長あての届出にかゝる原、被告の協議離婚は、無効であることを確認する。

原告と被告とを離婚する。

被告は、原告に対し金三〇〇、〇〇〇円及びうち金二〇〇、〇〇〇円に対する昭和三〇年一月一六日から完済まで年五分の割合うち金一〇〇、〇〇〇円に対する本判決確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による各金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、第三項中、金二〇〇、〇〇〇円の支払を命ずる部分に限り原告において金六〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二、第五項同旨及び「被告は、原告に対し金三〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三〇年一月一六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。」との判決並びに金員の支払を求める部分につき仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

原告は、昭和二七年五月一六日訴外出口七郎の媒しやくにより被告と事実上婚姻して、同棲し、昭和二八年一月一九日その婚姻の届出をしたが、被告は、昭和二九年七月二六日附けで東京都練馬区長に対し原、被告の協議離婚の届出をした。

しかしながら、右離婚の届出は、原告の意思に基かないものであるから、無効のものである。すなわち、原告は、右婚姻後、後記のように被告から暴行を受け、その婚姻共同生活は恵まれたものではなかつたが、原告は、極力これを忍従していたところ、被告は、昭和二九年七月原告に対し離婚を求め、原告が応じないと見るや、原告に無断で協議離婚の届書を作成した。原告は、右偽造の届書を発見し、ただちにこれを焼却したが、被告は、同月二四日再度協議離婚の届書用紙を取り寄せ、原告の署名、押印、原告の父草谷竹松の署名、押印を偽造したうえ、所要の事項を記載して、同月二六日練馬区長にあて右届書を提出し、原告は、漸く翌二七日その事実に気付いたのであつた。かようなわけであるから、右届出は、原告の意思に基かずになされたものであるから、無効のものである。

ところで、原告は、被告との婚姻中、被告から極度の暴行を受け、虐待された。原、被告は、その婚姻の当初、都内池袋で一室を借り受け、同所に約四ケ月間居住した後、被告の母大和かなえの居住する被告所有家屋の一室に移住したのであつたが、被告は、右間借生活の当時失業中で、原告がやむなく職を得て、その収入で被告との生活を支えていたところ、勤務を終えて帰宅すると、言掛りを付けて殴り、蹴るのであり、また、日常のさ細なことがらで、被告の意に沿わないところがあると、必ず、右のような乱暴を働き、そのような態度は、被告の母と同居するに至つても一向に改められず、そのため、原告は、身体中生傷の絶えたことがなく、被告に顔面を殴打されて鼻血を出したことも再三であり、眼部が内出血したこともあつた。被告は原告に対してだけ右のような乱暴を働くにとどまらず、その弟、更に、母かなえに対してさえも同様の行為に出るのであり、かなえは、被告に殴打されたため、身体にあざができ、銭湯にも行けないのを嘆いていたことがあつたほどである。

被告の右行為からみて、被告は生来粗暴な性格の持主であると断定するをはばからない。被告は、原告との婚姻前、被告の勤務さきで、さ細なことがもとで同僚の事務員を殴打し、蹴飛ばしたため告訴沙汰を引き起し、その勤務さきを失つた事実もあつたのである。

それのみではなく、被告には、異常なほどしつと深い性格がある。前記出口七郎は、原、被告の婚姻の媒しやく人であるとともに、原告が長年勤務した店舗の主人で、親子同様の親交があつたが、被告と婚姻して以来、同人の前で出口の名前を口に出すことさえできず、また、被告の友人をほめれば、被告は、「気があるのだろう。」と述べる始末であつた。

勿論、原告は、できる限り忍従し、被告の意に従つて、被告が「養うために結婚したのでない。もつと収入のあるところで働け。」と言うので、新聞広告により富士商会という商店に就職さきを見付けたり、被告との婚姻の継続を願つて来たのであつた。しかるに、被告は、前記離婚の届出前、「性格が合わない。」という理由だけで原告に離婚を求めたので、原告は反対したところ、「出て行かぬと新聞の三面記事になるような刃傷沙汰をするから、出て行け。」とおどして、原告を無理に追い出そうとし、遂に、前記のように二度までも協議離婚の届書を偽造して、その目的を果たそうとしたのであつた。かようなわけであるから、原告も被告に望みを失い、その婚姻を断念するほかない。そうして、以上述べたような事情は、民法第七七〇条第一項第五号にいわゆる婚姻を継続しがたい重大な事由があるときにあたるから、右事由に基き、裁判上被告との離婚を求める。

原告は、大正一五年一月一三日出生、昭和一八年沼津市所在の精華女学校を卒業の後、昭和二〇年三月文化服装学院を卒業し、その両親は、現在伊東でミカン畑を経営しており、原告は、いわゆる良家の子女で、被告との婚姻が初婚である。被告は、昭和一七年都内芝浦の東京高等工業学校電気科を卒業し、陸軍の多摩研究所に入所した後応召し終戦後復員して、レコード会社等に勤務していたが現在日本広研株式会社に勤務し、その月収は、三〇、〇〇〇円余あり、他に資産として時価約一、〇〇〇、〇〇〇円相当の建物二棟を所有している。そうして、被告は、昭和二五年二月二五日訴外井下たみ子と婚姻して、その届出を了し、昭和二六年三月六日同女と協議離婚し、その届出をしたのであつて、原告との婚姻は、再婚にあたる。原告は、被告との婚姻生活を通じて、経済的にも被告に奉仕したことは、前述のとおりであるにもかかわらず、破局に導いたものは、専ら被告の責めに帰すべきものであり、被告の行為は、結婚詐欺的常習行為であるというべく、他方、原告は、現在満二八歳、もはや再婚を望めない年令に達しているのである。

しかも、原告は、婚姻前の交際期間中、被告の申出により、合計金三〇、〇〇〇円を同人に貸与したほか、結婚式費用、新婚旅行の費用までも支弁した。かようなわけで、離婚に伴う原告の精神的苦痛を慰藉するには、金二〇〇、〇〇〇円をもつて相当とすべきであり、被告は、そのほか、財産分与として原告に対し金一〇〇、〇〇〇円を分与すべきである。

そこで、原告は、前記協議離婚の無効確認、被告との離婚を求め併わせて、被告に対し、右慰藉料及び財産分与額合計金三〇〇、〇〇〇円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和三〇年一月一六日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため、本訴請求に及んだ。以上のように述べた。〈証拠省略〉

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、

原告の主張事実中、原、被告は、昭和二七年五月一六日出口七郎の媒しやくにより事実上婚姻して同棲し、昭和二八年一月一九日その婚姻の届出をしたこと、被告は、原、被告の協議離婚の届書を作成し、原告主張の日に練馬区長に対し右届書を提出して離婚の届出をしたこと、原被告は、その婚姻の当初原告主張のように約四ケ月間間借生活をした後、被告所有の家屋に居住し、被告の母大和かなえと同居して来たこと、原被告の学歴並びに職歴に関する原告の主張事実、原告は、現在満二八歳、その両親は伊東に健在で、原告にとり被告との婚姻が初婚であること、被告はさきに井下たみ子と婚姻しついで同人と協議離婚をし、いずれもその届出を了したことは認めるが、その余の点を争う。

右離婚の届書は、原、被告が協議のうえ離婚することを定め、被告が原告の承諾を得てその氏名を記載し、かつ、押印したものであり、原告の父草谷竹松の氏名の記載、押印についても、同様、原告の承諾を得て記名、押印したもので、右届出は、原告において離婚の意思を欠くものではなく、むしろ、原告が被告に対していわれなく不満を示し、昭和二九年三月七日ころから被告と離婚したい旨を申し述べていたのであつた。

また、被告の現在の月収は、約一八、〇〇〇円の勤務さきからの収入と、被告が所有し、かつ現住する家屋の一部を他に賃貸し、これによる賃料月額五、〇〇〇円があるにとどまり、その資産としては、右家屋一棟時価約八〇〇、〇〇〇円相当のものだけで、これとてもその一部である洋館の部分を実弟に贈与しており、原告主張のようなものでない。また、仮に、原告がその主張のように、被告との結婚費用、生活費を支弁したとしたとしても、右の式費用は被告においても負担したものがあるし、生活費用の支弁は、婚姻の共同生活上当然のことである。しかも、原告は、前記離婚の届出をした後、被告のもとを立ち去るに際し、被告所有のラジオ、時計、毛布、スタンド各一個以上合計約二一、五〇〇円相当のものを被告から奪い取つて、持ち去つたのであるから、これにより原告は、仮に、その精神上の苦痛があるとしても、慰藉され、また、財産分与を受けたはずであるから、この意味においても、原、被告間の関係は、総て清算ずみである。かように答えた。〈証拠省略〉

理由

公文書であつて、真正に成立したものと認める甲第一号証、第四号証(いずれも、戸籍謄本)と原被告本人尋問の各結果を総合すれば、原被告は、昭和二七年五月一六日事実上婚姻して、同棲し、昭和二八年一月一九日その婚姻の届出をしたこと、被告は、原告との協議離婚の届書を作成し、昭和二九年七月二六日東京都練馬区長に対しこれを提出して、同日離婚の届出をしたことが認められる。

原告は、右離婚の届出は、原告において離婚の意思がないにもかゝわらず、なされたものであるから、無効であると主張するので考えるに、後記のように、被告は、その家庭内において専横で、かつ、原告は、被告との婚姻中、被告から数々の暴行を受け、殊に、右離婚届が提出されたころは、どうしても別れて見せるという趣旨のことを述べており、とうてい原告と協調して、円満に離婚をはかるというような事情ではなかつたことが認定でき、更に、証人草谷竹松の証言原被告本人尋問の各結果(ただし、被告本人尋問の結果中、後記採用しない部分は除く。)を総合すれば被告は、右離婚の届出前である昭和二九年七月中旬にも原告に無断で協議離婚の届書を作成し、原告がこれを発見したので、ただちに焼却したことがあつたこと、右提出された協議離婚の届書(乙第一号証)中、原告の署名、押印、離婚の証人としての、原告の父草谷竹松の署名、押印は、いずれも被告の記名、押印にかゝるものであるが、原告及びその父の不知の間になされたものであつたことが認められる。かような事実によれば、原告は、被告との離婚の意思はなく、右届出は、原告の意思に基きなされたものでないと認めるのが相当である。証人大和かなえの証言中、原告は、昭和二九年から被告と別れる旨を述べていたとの供述部分、被告本人尋問の結果中、原告は、同人及び草谷竹松の記名、押印を承諾していたとの供述部分は、信用しないし、他に、右認定を妨げるに足る証拠はない。従つて、前記協議離婚の届出は、無効のものといわなければならない。

ところで、検甲第一、二号証に証人出口七郎、草谷竹松、金田仁、外山助一、大和かなえ、中村あきの各証言及び原被告本人尋問の各結果(ただし、大和かなえ、中村あきの各証言、被告本人尋問の結果中、後記採用しない部分を除く。)を総合すれば、次の事実を認めることができる。すなわち、原告は、昭和二六年四月結婚紹介所を介して被告と知りあい交際の後、出口七郎の媒しやくにより昭和二七年五月一六日事実上婚姻し、都内池袋所在の金田仁かたで同棲生活を始めたのであつたが、被告は、当時失業中で定職はなく、原告が右婚姻前から勤務していた出口かたに引き続き勤務し、その収入中月々一〇、〇〇〇円を生活費に支弁し、被告との共同生活を支えていたところ、被告は、原告の帰宅後、その顔面を殴打したことが、たびたびあり、そのため右金田かたの家人も離婚を原告にすすめたことがあつた位であつた。ついで原、被告は同年九月から後、被告所有の、その肩書住所地所在の家屋に移住し、被告の母大和かなえと同居するに至つたが、被告の暴力を振う態度は、一向に改められず、鼻血が飛び、顔面が腫れ、目が充血するほど原告を殴打したことは、しばしばであり、しかも、たとえば、原告が針仕事をし、被告が新聞を読んでいるという平常かつ平和であるべきはずのときに、急に被告が原告を手で殴るというふうに、突然暴力に及ぶのであつた。また、被告は、右金田かたでの間借生活のころ、原告の姉が訪問して来た際、同人が被告に対し、主人に対するあいさつを欠いたという理由だけで憤り、原告がその姉のために食事の仕たくをすることをさし止め、意に沿わない点があると母かなえをも殴打することがあつたのであり、被告の家庭内での生活態度は著しくわがまゝ専制的であつた。

他方、原告は、昭和二七年一一月ころ右出口かたでの勤務をやめた後も、他に職を求め、生計を助け、被告に協力して来たのであり、原告は、勝気、被告は内向的で、この点の性格上の相違から、原告の平素の態度行為が、被告の目に侮辱的であると映り、これが右のような被告の行為を挑発したふしもあつたけれども、その他に、被告の右行為を理由付けるなにものもないのであつた。ところが、被告の原告に対する感情は、時日の経過とともに悪化し、被告は激昂したうえ、原告所有の時計(検甲第一号証)、旅行カバン(検甲第二号証)を振り出し、「こんな物、おまえの物だから。」と云つて、時計を破壊し、また、カバンを庖丁で裂き、原告が慰撫しても、「肌があわないから、出て行つてくれ、三面記事を賑わすようなことをしかねないから。」と申し述べるほどであり、昭和二九年七月に至り、遂に、被告は原告との離婚を決意し、「居直るつもりなら届を出してしまう。」と述べて、前記のような無断で第一回の協議離婚の届書を作成し、これが発覚すると、「原告の父を始め原告の親戚中、日本刀で切る。」と暴言を述べ、ついで前記第二回の届書を作成し、これにより離婚の届出をしたのであつた。そこで、原告は、やむなく、同年八月一日被告かたからその持参の荷物を引き取り、被告のもとを去つた。以上の事実が認められる。証人大和かなえの証言中「同人は、被告から殴打されたことはない。」との供述部分、及び同証言及び証人中村あき、同深見としの証言並びに被告本人尋問の結果中、離婚はむしろ、原告から求めていたものであり、原被告間の不和をもたらした責任は、専ら原告にあるとの趣旨に帰着する供述部分は、前掲反対証拠と対比して信用しないし、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

右認定事実に基き考えるに、右のような被告の暴行は、その性格、若しくは、専制的なものゝ考え方から出たものと理解するほかはなく、これらが原告をして被告から離反せしめた主たる原因であり、被告は、勿論原告としても、もはや婚姻の継続を望んでいないことは、明らかである。かようなわけであるから、右事情は、民法第七七〇条第一項第五号にいわゆる婚姻を継続しがたい重大な事由があるときにあたるものというべきであり、右事由に基き、被告との離婚を求める原告の請求は、その理由がある。

つぎに、離婚に伴う財産分与並びに慰藉料の支払を求める部分につき、考えるに、原告の学歴に関する事実が原告主張のとおりであることは、当事者間に争がないので、これにより右事実を認めることができ、原告が被告と婚姻、同棲中、職を求めて働き、その共同生活を支え、若しくは、生計を助けて来たことは、前記認定のとおりであり、甲第一号証によれば、原告は、被告との婚姻が初婚で、現在満三〇歳に達し、通常の婚期を過ぎていることが認められる。他方、公文書であつて、真正に成立したものと認める甲第三号証(税務事務所長作成の家屋所有証明書)に、原、被告本人尋問の各結果を総合すれば、被告は、昭和一七年都内芝浦の電気学校を卒業し、応召、復員後、レコード会社、放送新聞社、日本広研株式会社等に勤務した後、現在放送テレビ代理店を営み、その月収ほぼ二〇、〇〇〇円を得ていること、被告は、その肩書住所地所在の平家建住家一棟建坪三五坪四合中、洋館部分を除き、その余の部分、同所々在物置一棟三坪、練馬区南町一丁目三、五六六番地所在店舗二階建一棟、建坪二一坪五合、二階一三坪五合を所有し、昭和二九年度固定資産評価額は前二者につき、三三五、四〇〇円、後者につき一五三、〇〇〇円と定められたのであり、被告は、前者の住家中、洋館部分を除いたその余の部分を間貸して賃料一ケ月につき約五、〇〇〇円を挙げ、後者の店舗二階建一棟を賃貸して、賃料一ケ月につき一、五〇〇円を得ていることが認定できる。以上の認定を動かすに足りる証拠はない。

ところで、離婚に伴う財産分与は、財産関係の面からみた婚姻の総清算であり、従つて、夫婦の協力により取得した財産及び、一方の特有財産であつても、他の一方の努力により維持、保存しえた限りその特有財産が分与の対象となるべきであろうが、他面分与財産により離婚後における一方の配偶者の扶養をはかる趣旨をも包含するものと解すべきである。かようなわけであるから、右に述べた事情一切を考慮して、被告は、原告に対し財産分与として金一〇〇、〇〇〇円を支払うのが相当であるというべきであり、また、原告が被告と離婚するほかない状態に至らせたのは、前記認定のような被告の行為に基くのであるから、被告は、原告の被つた精神的苦痛を慰藉すべき義務があることはいうまでもなく、以上認定のような事情を総合して、原告の精神的苦痛を慰藉するには、金二〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

被告は、原告は、被告のもとを立ち去るに際し、被告所有の物件を奪取したから、これにより既に慰藉されていると抗争するが、証人大和かなえ、中村あきの各証言中、右奪取の点につき、被告の主張にそう供述部分は、信用しがたいし、これをおいてほかに、右主張を認めしめるに足りる証拠はない。

もつとも、原告は被告に対し財産分与金一〇〇、〇〇〇円、慰藉料金二〇〇、〇〇〇円の支払を求めるとともに、その双方に対する本件訴状送達の日の翌日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、右慰藉料に対する右遅延損害金の支払を求める部分は、正当であるけれども、財産分与請求権は、その認容の判決の確定とともに発生するものであることは、民法第七七一条、第七六八条第三項に徴して明らかであるから、右財産分与金に対する遅延損害金の支払を求める部分のうち、本判決確定の日の翌日から完済まで右割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当であるが、その余の部分は、理由がない。

以上、説明のとおり原告の本訴請求中前記協議離婚の無効確認、被告との裁判上の離婚、被告に対し金三〇〇、〇〇〇円及びうち金二〇〇、〇〇〇円に対する昭和三〇年一月一六日から完済まで年五分の割合による、うち金一〇〇、〇〇〇円に対する本判決確定の日の翌日から完済まで右同率の各遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから、これを認容すべきも、その余は、失当であるからこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九二条、第八九条を適用し、仮執行の宣言は、財産分与を求める部分については、その支払義務が本判決の確定とともに発生するものであることは、前述のとおりであるから、その確定前に執行を許すべきものではないから、その申立を却下し、右慰藉料金二〇〇、〇〇〇円の支払を命ずる部分につき同法第一九六条を適用してこれを付すべきものとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤令造 田中宗雄 間中彦次)

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